商標とは?
事業者が自己の取り扱う商品・サービス(役務)を他人の商品・役務と区別するためにその商品・サービスに使用するマーク(標識)を「商標」といいます。
標識のうち、商標登録することができるのは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」に限られています。登録される商標は、必ず視覚によって確認できることが必要であり、音声、味、においなどは商標登録することができません。(米国のように、においや音声を保護対象とする国もあります。)
商標登録には以下の5種類あります。
文字商標
文字のみからなる商標。 その文字商標が、特定の意味を有するか否かは問いません。
図形商標
写実的なものから図案化したもの、幾何学的模様等の図形のみから構成される商標。
記号商標
暖簾記号、文字を図案化し組み合わせた(モノグラム化した)記号、記号的な紋章。
立体商標
商標を立体化したもの、包装容器のように容器自体を特殊な形状にして商標として使用するもの、実在または架空の人物、動物等を人形のように立体化したものなど。
結合商標
文字・図形・記号・立体の商標を組み合わせた商標です。
商標登録を行う場合には、必ずその商標を使用しようとする商品・役務(サービス)を指定しなければなりません。この際に指定する商品・指定する役務を、指定商品・指定役務といいます。
商標登録後は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができ、指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務について、登録商標に類似する商標を他人が使用することを禁止できます。
このように、商標権の効力は「商標」と「指定商品又は指定役務」とによって決まります。
商品・役務の指定は、商標法施行令で定める商品・役務の区分に従って行います。商品・役務の区分は国際分類に従って45の類に区分されています。商標出願時には、この区分から1つ又は複数の区分(類)を選んで出願することになります。指定商品は、第1類~第34類の34区分に分類されており、指定役務は、第35類~第45類の11区分に分類されています。
商標登録の流れ
商標権を得るためには、まず特許庁に商標出願をする必要があります。
商標権は独占的な権利ですから、あらゆる商標に権利を与えてしまうことはできません。そこで、商標出願された商標は特許庁の審査官により審査され、審査を通ったものだけが登録となります。
商標制度では、審査請求制度はありませんので、出願されたものすべてが審査され、拒絶の理由がないものは登録査定されます。
また、登録に問題がある場合には、拒絶理由が通知され、それに対しては、意見書や補正書を提出して拒絶理由を覆すことも可能です。審査の結果、登録査定となり、登録料を納付すると初めて提出した商標は登録商標となります。
その後、登録料(10年分又は5年分)を納付することにより商標登録され、商標権が発生します。そして、設定登録された商標は、商標公報に掲載されます。
商標権の存続期間は、登録の日から10年をもって満了しますが、存続期間満了前に更新登録の申請によって更新できます。
ヒアリンク→書類作成・出願→審査→商標登録
出願
商標権を取得するためには、まず法令で定められた所定の書類を、商標登録願として特許庁に提出します。
補完書提出・補正書提出
商標登録出願がされると、特許庁ではまず、提出された書類が定められた書式にしたがって記載されているかどうか、形式面で不備がないかを審査します(方式審査)。
そして、方式審査で、方式(形式)に不備があると認められたときに、特許庁から一定の期間内に間違いを直すように補正命令または補完命令が出されます。この命令を受けた場合には、手続補正書や手続補完書を提出します。対応しなければ、商標登録出願が却下されてしまいます。
意見書・補正書提出
方式審査が終わると、特許庁の審査官が、出願された商標が登録されるべき要件を満たしているか否かの審査を行います(実体審査)。そして、登録の要件を満たさないものは拒絶の理由が通知されます。
拒絶理由通知を受けた出願人は、一定の期間内(通常は40日(在外者は3月))に意見書等を提出して、登録の要件を満たしている旨を主張することができます。
<審査着手状況(商標)> http://www.jpo.go.jp/torikumi/index.htm
出願を行った分野により審査の進み方が若干異なりますが、出願からおおよそ7~10月で実体審査が行われます。詳しくは、特許庁が審査着手状況を公開しておりますので、こちらをご参照下さい。
拒絶査定不服審判
意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり登録できないと審査官が判断したときは、拒絶査定がされます。拒絶査定の判断に対して不服があるときは、商標権取得のために、拒絶査定不服の審判請求をすることができます。
登録料の納付
審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合、または意見書や補正書の提出によって拒絶理由が解消した場合には、登録査定がされます。そして、登録査定の後所定の期間内(30日以内)に、出願人が登録料を納めれば、商標登録原簿に登録され、商標権が発生します。商標権の設定登録後、商標登録証書が出願人に送られます。
登録料は10年分を一括納付することができるほか、前記支払い分(5年分)と後期支払い分(5年分)とを分割して納付することもできます。
登録異議申立に対する意見書提出
設定登録され発生した商標権は、その内容が商標公報に掲載されます。商標公報の発行日から2月間は誰でも登
録異議申立をすることができます。登録異議申立は、間違った商標が登録され、本来使用されるべき商標が登録できないという状況を防ぐべく、必要のない商標に対して異議を申し立て、登録の取り消しを請求する制度です。審査官の間違った登録処分を見直すことによって、登録の信頼を高めることになります。
登録異議申立があり、審査官がその理由があると認めたときは、商標権者に対して意見書の提出を求めます。意見書を提出することができる期間内に限り指定商品(あるいは役務)の減縮等の補正をすることができます。
意見書等の提出によって異議申立の理由が解消した場合には、商標権は維持され、意見書等の提出によっても異議申立の理由が解消されないときは、異議申立の理由があると判断されて登録は取り消されることになります。
更新
商標権の存続期間は設定登録の日から10年で終了します。
しかし、10年ごとに存続期間を更新することにより、半永久的に権利を存続させることができます。存続期間の更新(更新申請)は、所定の商標権存続期間更新登録申請書を特許庁に提出し、所定の更新登録料を納付することにより行います。
特許出願の流れ
ヒアリンク→書類作成→審査→特許登録
出願
特許を受けるためには、まず、特許を受けたい旨の書面(願書)や、特許を受けたい発明の内容を記載した所定の書類(特許請求の範囲、明細書、(図面)、要約書)を特許庁に提出します。このことを特許出願といいます。
我が国では、同じ発明であっても先に出願された発明のみが特許受けることができるという先願主義を採用していますので、発明をしたら早急に出願すべきでしょう。
また、出願時前に、既に知られた発明は特許を受けることができませんので、特許出願前に発明を公表することはできるだけ避けることが賢明です。
方式審査
特許出願されたものは、全てが審査されるわけではなく、出願人または第三者が審査請求料を払って出願審査の請求がされたものだけが審査されます。
審査請求は、出願から3年以内であれば、いつでも誰でもすることができます。
出願公開
出願された日から1年6ヶ月を経過すると、発明の内容が公開公報によって公開されます。
審査請求
特許出願されたものは、全てが審査されるわけではなく、出願人または第三者が審査請求料を払って出願審査の請求がされたものだけが審査されます。
審査請求は、出願から3年以内であれば、いつでも誰でもすることができます。
みなし取り下げ(審査請求期間内に審査請求なし)
出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできませんのでご注意下さい。
実体審査
審査は、特許庁の審査官によって行われます。
審査官は、出願された発明が特許されるべきものか否かを判断します。
審査においては、まず、法律で規定された要件を満たしているか否か、すなわち、拒絶理由がないかどうかを調べます。
主な要件としては以下のものがあります。
① 自然法則を利用した技術思想か
② 産業上利用できるか
③ 出願前にその技術思想はなかったか
④ いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している人)が容易に発明をすることができたものでないか
⑤ 他人よりも早く出願したか
⑥ 公序良俗に違反していないか
明細書の記載は規定どおりか
拒絶理由通知
審査官が拒絶の理由を発見した場合は、それを出願人に知らせるために拒絶理由通知書を送付します。
意見書・補正書
出願人は、拒絶理由通知書により示された内容に対して、意見書を提出することによって審査官に意見を述べたり、補正書を提出することによって、発明の内容を記載した明細書等の書類を補正することができます。
このように意見書や補正書を提出することによって、拒絶理由を解消することができる場合が多々あります。
特許査定
審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合または拒絶理由が意見書・補正書により解消された場合は、特許すべき旨の査定を行います。
拒絶査定
意見書や補正書によっても拒絶理由が解消されておらず、やはり特許できないと審査官が判断したときは、拒絶をすべき旨の査定を行います。
拒絶査定不服審判請求
審査官が下した拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。
設定登録(特許料納付)
特許査定がされた出願については、出願人が1~3年分の特許料を納めた後、特許登録原簿に登録されることによって、特許権が発生します。
特許権の設定登録後、特許証書が出願人に送られます。
特許公報発行
設定登録され発生した特許権は、その内容が特許公報に掲載されます。すなわち、特許公報に記載された発明の内容を、第三者が実施した場合、特許権侵害となります。
特許権消滅
出願から20年経過後、もしくは、設定登録から4年目以降の特許料の納付を行わないことにより、特許権は消滅します。特許権の消滅後は、誰でもその発明を実施することが可能となります。
実用新案登録出願の流れ
出願は下記の流れに沿って行われます。
ヒアリンク→書類作成→審査→実用新案登録
出願
出願するには、所定の書類を特許庁へ提出する必要があります。
特に、実用新案の保護対象は「物品の形状、構造又は組合わせに係る考案」であるので、願書には必ず図面を添付しなくてはなりません。
また、基礎的要件違反で出願が却下される場合を除き、どのような技術内容であっても登録されますので、第1年から第3年分の登録料を出願時に納付する必要があります。
審査
特許出願の場合のように出願審査請求制度はありません。
また、実体審査(新規性、進歩性等)を経ることなく、従来の方式審査に加え、以下にあげる基礎的要件のみが審査されます。
1.物品の形状、構造又は組合わせに係る考案であること(方法や材料そのものは登録されません)
2.公序良俗に反しないこと
3.請求項の記載様式及び出願の単一性を満たしていること
4.明細書若しくは図面に必要な事項が記載されており、その記載が著しく不明確でないこと
なお、方式上の要件又は基礎的要件を満たしていない場合は、補正命令が出され、これに対する応答がない場合には、その出願に係る手続は却下となります。
設定登録
方式上の要件及び基礎的要件を満たした出願は、実体審査を経ずに実用新案権の設定登録がなされます。
なお、第1年から第3年分の登録料は、出願と同時に納付しておく必要があります。
実用新案広報発行
実用新案権の設定登録があったときは、その考案の内容を公報に掲載して発行し、ここではじめて公開されることとなります。出願から設定登録までの期間が数ヶ月程度と短いので、特許のような出願公開制度を用いてまで公開を急ぐ必要がないためです。
技術評価書の請求
実用新案技術評価書は、設定登録された登録実用新案の権利の有効性についての客観的な判断材料となるものであって、審査官が先行技術文献の調査を行って作成するものであり、出願後はいつでも、誰でも請求することができます。
なお、実用新案権は実体審査を経ずに登録される権利であるため、出願に当たっては、十分に先行技術の調査を行い、その結果を踏まえた上で出願を行うか否かを決定することが重要です。